緑風
 
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龍とボクと。 第三章 2、3―1

 2
「なるほど。そういったわけがあったとは。」
こくこくと納得したように頷くフェイシア。
 ぼくたちは迷宮をさまよっていた。正確には祭壇への道のりだ。
どうやら祭壇というのはこの建物の奥にあるもので、この建物自体が祭壇ではないらしい。
「えぇ、私たちは幼いころから結婚を約束しあった仲なのです!」
そう言ってリアはぼくの腕に抱きつき、そうですよね?とぼくに訊く。
「え、あ。まぁ・・・。」
ぼくは適当に答えておくことにした。だって、否定したら殺されそうだし・・・。
フェイシアの方を見ると、なんだか悲しそうな顔をしていた。どうしたんだろうか。
「ところで、フェイシアさんは何故ここに?」
リアの質問にフェイシアは一呼吸置いて答えた。
「私は修業のためにここに来たのです。」
「修業?」
フェイシアが頷いて続ける。
「えぇ。私は子供のこ――敵です。」
言葉を切ってフェイシアが構える。ぼくもナイフを引き抜き、身構える。
――どこだ?何処から来る?
「!?フラント殿、後ろです!」
フェイシアが叫んだが次の瞬間、ぼくは倒れていた。
頭に鈍い痛みがある。
何かで殴られた・・・?
リアがぼくに駆け寄って起き上がらないで。と言って行ってしまう。
横向きに倒れていたぼくはうつぶせになると、前をみる。
その先では二人が戦っていた。
相手は石造の番人、ガーゴイルだった。
なるほど、気配が無いわけだ。
フェイシアが斬撃で一体、二体と落とし、リアは打撃で壁に激突させて砕いていた。
意識が途切れた。
・・・・・・・・・。
意識を取り戻して起き上がると、ポトリと額に乗せてあったタオルが落ちる。
「大丈夫ですか?」
「心配しましたぁ。」
ぼくの顔を二人が覗き込む。
「あぁ・・・・・・大丈夫。」
立ち上がろうとすると少しふらっとしてバランスを崩す。
「もうしばらく休憩しましょう。」
そんなぼくを見てフェイシアが告げる。
・・・・・・情けない。
「それではぁ、お茶にしましょう。」
急にそう言い出したリアが肩から下げていたバッグからとバッグより明らかに大きな保温用のポットを出す。
どっから出したんだよ。それ。
そんなことは気にせず、リアはさっさとお茶を入れる。
貰ったコップの中を覗き込む。
「なんか、緑色なんですけど・・・。」
ぼくがそう言うと、リアがにこにこしながら答えた。
「これはぁ、緑茶と言ってこの地方に伝わるお茶なんですぅ。」
さらにフェイシアが付け足す。
「抗菌作用があり、病気にかかりにくくなります。」
本当かよ・・・。どう考えても草の煮汁に見えるんですけど。
こういう料理、ぼく作ったことある。
とりあえず一口飲んでみる。
・・・・・・・・・苦い。
ぼくは少々苦いお茶を飲み終えると、先に進んだ。
深い闇が往く手を遮っていた。
 3―1
「ここが、「青の祭壇」・・・・・・。」
ぼくは驚いた。
 その場所にはこれまでとは違い、大きな空間が出来ていた。
壁や床、さらに天井まで真っ青だった。綺麗過ぎるその床はぼくたちの姿を映し出す。埃一つないって感じ――なんだか気持ち悪いかも。
「なんだか気持ちの悪いところですねぇ・・・」
頬に手を置いてリアが言う。ぼくと同じ感想を持ったらしい。うんうん。やっぱ気持ち悪いよな。
「この祭壇は月に一度、水が噴出してゴミやその他を全て流します。・・・古代文明の遺産らしいのですが、どういう仕組みかは判らないそうです。」
フェイシアが説明すると、リアが関心して声を上げる。
「ふぇ~、お掃除要らずなんですねぇ~。」
いや、だからわざとらしいって。それ。
 周囲に目をやると、魔物らしい陰はない。
まず、隠れる場所が無い。ここには階段と大きな踊り場しかない。
踊り場の上には変な形の小屋のような物が立っており、中に剣が置いてある。
「御神体」とかいうやつらしい。
ぼくたちは歩いてその剣の前に行く。
「これが「御神体」の「爆炎焦蛍」です。炎を封印しているため斬った瞬間に爆発させることができます。」
「ここは水の神殿ではなかったのですかぁ?」
たしかに。「青の祭壇」と呼ばれてるし、通路の隅には絶えず水が流れていた気がする。
それなのに炎の剣を祭っているなんて変だ。
「この剣は炎を封印しています。しかし魔力によって創られた炎なのでその力は強大です。その力を弱めるため、こうして水の力の強い場所に安置されているのです。」
なるほど。と、いうことは「赤の祭壇」には水の剣か何かが祭ってあるってことか。
フェイシアの言葉に一人で頷いていると、ガシャっと音がした。――この音は鎧の音?
 ぼくが振り向くと、階段の下に一人甲冑を身にまとった人間が立っていた。
いや、人間じゃなかった。
よく見るとソレは頭が無い。頭が無いというか、その頭はしっかりと左腕に抱かれている。
――魔物!
ぼくが思った瞬間、ソレは言葉を発した。
『やはり、わしを殺しに来たか。しかし、舐められたものだ。このような小童とは・・・』
ガシャリと音を立てて階段を登る。
『しかも、剣士二人に従者が一人。バランスの悪い組み合わせだな。』
ぼくは剣を引き抜こうとしたが引き抜けなかった。ナイフを引き抜く。
「リア殿、外に待っている仲間に応援を頼んでください。」
フェイシアはそう言うと剣の柄に手を置き、体勢を低くとる。
「わかりましたぁ。」
リアはそう言うと階段を使わずに横から飛び降りた。
『ほぅ、外の仲間を呼びに行かせるとは、はたして間に合うかな?』
魔物は走り出しながら剣を引き抜く。
踊り場にたどり着いた魔物は短い詠唱の魔法を唱えた。
『ブラッグフォッグ!!』
周囲が闇に覆われ、視界がゼロになった。



12月21日(水)23:25 | コメント(0) | 小説 | 管理

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