| 龍とボクと。 第三章 4 |
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| 4 「いざ、勝負!」 細身の太刀を持った人型、デュラハンに向けてフェイシアが走る。 『久しぶりに腕が鳴る!』 叫んでデュラハンも走る。剣を前に掲げて、頭を護るように体を傾ける。 その間合いはフェイシアよりも広い。 デュラハンは強烈な突きを放つ。瞬間的に剣を引き抜きフェイシアは弾く。 続けてフェイシアは体勢の崩れたデュラハンの右肩口に斬りかかる。 が、それより先に左腕の頭が呪文を紡いだ。 『ファイア・ランス』 その攻撃を予知していたのか、フェイシアは攻撃を止め、避けに回る。 バックステップで後退し、デュラハンの頭に向けて投げナイフを投げる。 三本投げたナイフの全てをデュラハンが剣で払いのけ、走り出す。 ――くそっ、見てるだけなんて・・・。 ぼくは不甲斐ない自分を悔いながらも、その戦いを見守った。 デュラハンの激しい斬撃が浴びせられる。 一歩、二歩、三歩。 じりじりとフェイシアが後ろに追い込まれていく。 後ろには「御神体」の祭られた小屋。ぼくはデュラハンの右背後にいることになる。 ここから投げナイフを投げても良いだろうが、デュラハンに効くとは思えない。 それに、フェイシアは「勝負」として戦っている。 ぼくが手を出せば、きっと気を悪くするだろう。 フェイシアはついに追い込まれ、小屋に到達してしまった。 その後ろは闇。深い穴が待ち受けている。水が張られているが、極わずかで転落したらひとたまりも無いだろう。 ――ぼくはなんて冷徹な人間なんだろう。人が死のうとしているのに、見ているだけなんて。助けようとしないなんて。 デュラハンの斬撃にフェイシアがよろめく。 そのとき、ぼくは思わず叫んだ。 「後ろの剣を使うんだ!」 ぼくの声に、フェイシアがためらわず「御神体」である「爆炎焦蛍」を左手に持ち、横一線に薙いだ。 デュラハンの動きが止まる。 大振りでとどめを刺そうとしていたデュラハンはその一撃を避けることができなかった。 紅蓮の炎に焼ききられ、鎧は、右腕と胸、胴体に寸断されていた。 左手に持っていた頭は焼かれ、吐き気をもよおす断末魔と共に灰となった。 フェイシアは剣を鞘に収めると、「爆炎焦蛍」を元の場所に戻――そうとした。 『お待ちなさい。』 何処からか声がして、フェイシアの動きが止まる。 周囲に気配は無い。 『ソレを解放したのは貴方がその剣に選ばれたから。どうぞ、お持ちなさい。』 何も無い宙に突然、ヒトガタが現れる。一瞬燃え上がり、完璧に人の形になる。が、背中からは羽が生えていた。 炎の精霊の中でも戦乙女で知られる「ナツメグ」。本物を見るのはもちろん始めてだが、書物で見たことがあった。気性の荒い炎の精霊たちの中で、唯一優しく微笑む姿はどんな人の心も安らぐという。香辛料に彼女の名前がついているのは赤いのに甘い香がするからだそうだ。 「しかし、これはこの国を護るための物では?」 フェイシアの問いにナツメグは笑顔で応える。 『そう、この国を護るための物です。たった一度だけね。』 赤色の戦乙女はそっと地面に降り立ち、悲しげに続ける。 『その一度が来たのです。・・・すぐにその時は来ます。ですから――、貴女には戦っていただきたいのです。これは、私からの願いです。』 その言葉にフェイシアは少し疑問の表情を浮かべたが、すぐにそれを承知した。 それを聞いて、赤色の戦乙女は燃え上がり、一瞬で消えた。 いったい、何なんだ?
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12月21日(水)23:24 | コメント(0) | 小説 | 管理
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