緑風
 
極めて個人的な企画とかをやっちゃうブログ。
 

簡単ファイル共有の時計付きファイルマネージャ―


龍とボクと。 第三章 5、6

 5
「蒼の祭壇」を離れたぼくたちは外で待っていた二人に合流した。
「お父上、何故このようなところに?」
・・・やっぱり、というか、なんというか。
「隠居の世話焼きだ。――ところでそれはどうした?」
レイストさんの反応は薄かったが、フェイシアは随分驚いていた。
まぁ、確かに自分の親が居たら驚く・・・か。
「戦乙女が持って行けとおっしゃったので、有り難くいただいておきました。」
なんだかすごく口調が堅いけど、どうしたんだろ。
「そうか。」
レイストさんは頷くと紫焔の方を見て続ける。
「どうも先ほどから里の方が騒がしい。急ぐぞ。」
その言葉に僕たちは紫焔に急いだ。
数分歩いた所で気づく。
森がシンと静まっている。小鳥が鳴いていない。獣が息を潜めている。
「ヤな感じ・・・。人みたいで人じゃない。」
ヒューリィが走りながら呟く。
――もしかして、もう一体デュラハンが?
 里に着くと、周囲一帯が凍りついていた。
「あれは・・・里長?」
レイストさんの言葉に視線を移すと、そこには里長さんが立っていた。
いや、里長さんだったモノ。だろう。
『クッハッハ、来たかお客人。力は素晴らしい。全てを凍てつかせる!』
その姿は原型をとどめていない。
滅茶苦茶に膨れ上がった身体。変色した筋肉。顔は多少面影を残している。が、とても見れたものではない。右手には槍を持ち、左手は変な大きな爪になっている。
『凍えろ!!』
怪物は槍を掲げた。
 6
「くっ・・・・・・!」
手足の氷が体温を奪っていく。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
隣のヒューリィが寒そうに息をする。普段でも厚着なのにこの寒さだ、この状態が続くとまずい。
「ヒューリィさん。これをどうぞ。」
そう言ってリアがコートを貸す。
リアの方を見ると、
リアはいつものメイド服を着ていなかった。変わりに着込んでいたのは軽装の防具。腕と脛、胸当てがある程度の物だった。全体的に薄着で、いかにも寒そうだ。さらに帯には二本のナイフが挿されていた。
「リア・・・?」
ぼくが声をかけると自嘲気味にリアが応える。
「ごめんなさいフラント様。少し・・・暴れさせていただきます。アレは殺さないといけないモノですから。」
そう言うとリアの口元がきゅっと閉まる。一文字に。フードを被っていて表情は分からない。
でも、なぜか危ういような気がする。
ぼくが声をかけようとしたとき、大きな音がした。
『バゴォオオオオオン』
民家の影から様子を見ると、家が一軒潰れていた。破片の上を氷が走る。
フェイシアがその氷柱を避け、全力疾走で怪物に向かう。
「はああああああ!!」
斬撃を繰り出すがすべて槍でさばかれる。
『ぬるい、ぬるいぞ!!』
そう言って怪物は異様に大きくなった左手で殴りつける。
フェイシアが避けきれず右に大きく吹っ飛ぶ。吹っ飛んだ先が馬小屋で、わらが大量に積んであったから無事だったが、石造りだったら確実に致命傷だった。
「実は私・・・「ああいうモノ」を殺すために育てられてきたんです。」
リアがそう言ってナイフを引き抜く。
フェイシアが立ち上がり、再び剣を構えなおす。
「死に到ったとき、「アレ」も人に戻ります。」
言葉を紡ごうとしたがリアの独白の意味が理解できず、口を閉じてしまう。
「「異常なモノ」が人に戻るには死ぬしかないんです・・・。死んだとき、ソレは人に戻る・・・。」
怪物が突進したが、フェイシアはよろめきながらも避けきった。
「つまり、それは「人殺し」以外のナニモノでもないんです。」
ナイフを持ち直し、リアはぎゅっと握った。
その指の血が止まるくらいに。痕が残るくらいに。
「幼い私にそれは苦痛でした。殺したくありませんでした。――逃げたかった。ですから、連れ出して欲しかったんです。」
泣いている。涙を流さずに。リアが。
「でも、私は立ち向かうって決めたから。」
そう言って深呼吸をした。次の言葉を言うために。
「だから、私が死んでも、これからは逃げないでください。」
そう、微笑んだ。見えなくても、判った。
止めないと!
ぼくがそう思って凍っていない左手で肩をつかもうとしたが、するりとリアは抜けた。
足を踏み出して止めようと思ったが、右足が凍り付いて鉛のように動かない。
「リア!!」
叫んだが、遅かった。



12月21日(水)23:23 | コメント(0) | 小説 | 管理

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