緑風
 
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龍とボクと。 第二章 1

第二章 本物の。勇者。
 1
ま、とりあえずはどう見てもただの冒険者だろう。
ただ、変なメイドと無駄に分厚いコートを着た少女がいなければ。だが。
「暑い・・・」
この季節でこんな山中を歩き回っている自分がバカらしい。
なにが楽しくて真夏の地獄ハイキングなんぞしないといけないんだ。
「・・・魔物が居る。」
突然のフューリィの言葉にぼくは身を強張らせる。
剣に手をかけて引き抜―――けない。
「くそう、抜けないのかよ・・・!」
ガサガサと音が鳴る。
『ガサガサ・・・ガサガサ・・・!』
まずい。まずすぎる。
とりあえず鞘ごと腰から引き抜き、身構える。
くそう、昨日はコボルド、今日は・・・何だ?
そう考えつつ、こんな剣よりも木の多いここではナイフを使った方が戦えると考えて、鞘に刺さったままの剣を腰に挿す。
リュックの紐に付けてあるナイフを引き抜いて軽く体を傾けて構える。
『ガサガサガサッ!!ガサッ!!』
―――くるかっ!?
瞬間、頭部に痛みを感じた。
思わず後ろに倒れる。
大丈夫だ、たいしたことはない。
ぼくはつぶった眼を開ける。
「キュゥ。」
白くてもこもこした、つぶらな瞳のキュートな白い塊が目の前に居た。
「・・・・・・・・・」
思いっきり身構えていたぼくが一人だけ馬鹿みたいじゃないか。そうだろ?そう言いたいんだろ?あぁ、判ってるよ。自分でも十分判ってる。
 「それ」は少し跳ねると、茂みの中に入っていく。
―――待てヨ。
これだけ馬鹿にされておいて引き下がるほどぼくは気のいい少年じゃない。
ダッシュで追いかける。
ガサガサと草が音を立てる。
蔦に引っかかってこけそうになる。樹木に激突しそうになる。枝に刺さりそうになる。
走った。
―――あの野郎・・・食ってやる・・・
などと猟奇的な想像をしながら追いかける。
この深緑の森において白は異様に目立ち、絶対に見失わない。
マンドラゴラを蹴っ飛ばし、ビッグ・アントを踏みつけ、寝ていたグリズリーを駆け上がってそこから跳び、白い塊―――ホイップラビットの前に出た。
「さて・・・どうしてやろうか・・・」
ゴゴゴゴゴという効果音が出そうなほどだろう。ぼくは白い塊を睨みつけた。
ぼくの視線に脅える兎。
いい気味だ。ぼくだってさっきはこれぐらい脅えたんだ。
さっきのナイフを逆手に持って、地面のそれめがけて突き刺す。
・・・避けられた。
避けた兎の方はぴょんぴょん跳ねている。
「・・・・・・こっのぉ!!」
ぼくがそう叫びながら次の斬撃を繰り出そうとしたときだった。
そう、まさに瞬間だ。
―――カキンッ!
弾かれた。剣に。
どこからか飛んできた剣には見覚えがあった。
―――この剣は確か・・・
「やめておけ、無駄な殺生は愚か者のすることだ。」
剣の刀身は限りなく銀で、白に近い。
血のような赤で刀身に書き込まれた古代語が更に銀色を白に近づけて見せている。
更に柄には穴が開いており、銀の紐が結ばれている。
「アヌヴィス」と同じオシリスの法廷の神「トト」と契約された疾風の剣「ジェフティ」。
「それとも、冒険の基礎知識、ホイップラビットの肉が臭いということを知らんのか?」
そう言って反対側の林から男が現れる。
隻眼を隠すように赤髪が伸びていて左眼を隠している。これといった特徴の無い黄土色のマントを羽織っており、剣の柄から銀色の紐がそのマントに伸びている。
レイスト=ライザ。
父さんと同じ、本物の勇者・・・。
「フラント、お前は弱い者を殺し、糧にするためだけに剣を持ったのか?」
その言葉に、
「ドキッ」っとした。



10月7日(金)01:13 | コメント(0) | 小説 | 管理

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