| 龍とボクと。 第二章 5、6 |
|
| 5 赤い木々の間。なぎ倒されて開けた地面に一つ。 薄い黄色の髪の毛を持った「何か。」が横たわっていた。 紛れも無く、寝巻きにストールを羽織っているその「何か。」は彼女だった。 昨日貸した防寒マントが傍らで綺麗に折りたたまれて置いてあった。 「マーシィ・・・・・・」 ぼくは何が何なのか分からず、その場に立ち尽くす。 マーシィだった「何か。」は背中から朱い物を出していた。 地面に噴出されたそれは翼のようにも見えたが、単純に血だと理解した。 昨日、病気だと言いながら、元気に笑っていた彼女。 「な、・・・・・・んで・・・。」 ゆっくりと、ぼくは歩き出す。 一歩歩く。 マーシィでは無い。きっと間違いだ。 一歩歩く。 他の誰かならいい。 一歩歩く。 違う。彼女じゃない。 一歩歩く。 ・・・・・・・・・。 一歩歩く。 この娘は・・・マーシィだ。 彼女だ。間違いなく。 息をしていなかった。死んでいた。血のときと同じく、単純に理解した。 瞳は焦点があっておらず、口は半開きになって、血が朱いすじを作っている。 その場に跪いて、その瞳を閉じてやる。口を拭ってやる。 「・・・・・・何で。」 冷たくなった頬を撫でる。 ぼくは立ち上がる。 そのとき、唸り声がした。どこか、遠くで。 『グルルルル。』 なぎ倒された木々の跡をぼくはひたすらに走った。 逃がさない。許さない。絶対に。 しばらく走ったところで林の中に何か巨大なものがうごめいているのに気づいた。 ぼくは剣を引き抜く。 黒い刀身に金の縁取り。剣は小さく振動していた。 ぼくがではなく、剣が。 恐怖からではなく、怒りから。 赤い木々を踏みつけて、全身に魔法を施す刺青を持つ、巨大なトカゲが現れた。 その眼は硬く閉じられ、変わりに舌がきょろきょろと周りを見回すように動いている。 バジリスク。石化の魔眼を持つ、ゴルゴンの一種だ。 ぼくを見つけると、ゆっくりとその瞼を開け、瞳が動く。 「来い!斬って捨てる!!」 6 剣が強く振動する。 両手で水平に、右に刀身を出し、構える。 走る。 足元には木々の根が這っていたが、バジリスクの右足まで止まる事無く走る。 その右足に全身の力を込めて、剣を振る。 バジリスクの右足が寸断され、汚れた朱色の血が地面にぶちまけられる。 バランスを崩したバジリスクが地面に顎をつける。 呪われたその瞳がぼくを捕らえた。 その瞳が鈍く赤に光る。 それに呼応するかのように「イスデス」の刀身に収められていた紅い石が光り、次の瞬間、魔眼は発動されずにバジリスクの魔眼の瞳が爆ぜる。(はぜる) すると、その左眼を中心にバジリスクが石化を始める。 ぼくはそのまま左足を斬る。 噴出された血が木々を濡らす。 バジリスクは懇親の力で首を振り、ぼくは吹っ飛ばされる。 ぼくは木にぶつかり、剣を手放してしまう。 ・・・・・・バジリスクがその石化の瞳をこちらに向ける。 右眼だけになった魔眼でも、人一人程度なら殺すことは容易だ。 剣を構える暇は無い。 「・・・・・・っ!」 石化の魔眼がぼくを捉える瞬間、バジリスクの瞳はその位置で固定された。 剣で固定されていた。白銀に輝く剣で。 後ろの木陰からレイストさんが近づいてくる。 「・・・・・・すみませんでした。」 そのまま頭を下げ、レイストさんに対してぼくは謝った。 ぼくが一人で勝手に行動した結果がこれだ。 「お前は、護りたい者のために剣を振るった。」 そう言ってぼくの前に立つ。 「護りたい者のために剣を振るう者。それが「本当の勇者」だ。」 レイストさんは手を差し伸べる。 ぼくはそれを握る。 「強くなれフラント、お前は真に勇者になれ。」 ぼくは。 このとき、本当に。 誓いを立てたときよりも、 心から決心した。
本当の勇者になるために。 護りたい人を護るために。 誰も悲しませないように。
| |
|
10月7日(金)01:08 | コメント(0) | 小説 | 管理
|