| 龍とボクと。 第一章 1、2、3 |
|
| 第一章 弱虫の。旅路。 1 「王様にどう申し開きをしましょうか・・・」 テントで寝ようとしていたとき、リアが話し掛けてきた。 ちなみにいうと、龍の娘・・・ヒューリィはぼくにしがみついてすでに寝入っている。 「・・・寒い。」 と、潤んだ瞳で言われたのでついつい布団を貸してしまった。 本当に寒い。 にしても、本当にすごい厚着だ。 「あのぉ・・・勇者様ぁ・・・このまま逃げちゃいましょうか?」 その言葉にぼくはがばっと起き上がる。(布団を被ってなかったので音はしなかったが。) 「あれ・・・だめでしたか?」 ポケッと言うリア。 パジャマから肩を覗かせているのを見ていると、寝ぼけていっているように見える。 「・・・・・・ぼくと一緒に居ない方がいい・・・と思う。」 もう、寝ぼけていてもいい。 兎に角、一緒に逃げない方がいい。 「ふぇ?どうしてですかぁ?」 ぼくの言葉に疑問を投げかけるリア。 判った。正直に言ってやる。言ってやるよ。 どうなったって知った事か。 「ぼくは勇者なんかじゃない。冒険者レベル12の雑魚で嘘つきだ。そんなやつと一緒に逃げてて、これまでに騙した奴に見つかったら一緒に殺されるんだぞ?」 そう、一気に言い切って反応を待つ。 絶望するか、憤激するか、どちらでもいい。 刃物で襲い掛かってきたら逃げてやる。 ぼくだって伊達にこんな嘘を続けてきたわけじゃない。逃げ足だけには自信がある。 「そうなんですか。でも、着いていきます。」 その言葉を聞いてぼくは唖然とした。 「何言ってるんだ、ぼくは詐欺師同然の屑野郎なんだぞっ!?」 「でも、勇者様・・・いえ、フラント様は優しいですから。」 その言葉を聞いて、ぼくは立ち上がった。 立ち上がってしまった。 「何言ってるんだ!ぼくは人を騙して金をむしりとってる詐欺師だ!優しいもんか!」 ついつい声が荒くなる。が、 「嘘ですね?フラント様は、優しいです。いつも相手を傷つけないように気遣ってます。本当に嘘は悪い事を知っているから、なるべくお金を要求したり、物を要求したりしないようにしてます!」 瞳が嘘をついていなかった。 この少女は本気で言っている。 さらに少女は―――リアは目を伏せて続けた。 「それに・・・・・・嘘は、後からでも・・・・・・本当に出来るんです。」 今にも泣き出しそうな目で。 見つめ合った。 2 あの後、すぐにリアは眠りについた。 今日の朝、リアは全く昨日のことを忘れているように明るかった。 「朝ご飯ができました~。」 そう言ってぼくと龍の娘を呼ぶ。 ヒューリィは全く喋らなかった。 ただ、ジーっとぼくを見つめていた。 それにしても・・・よく暑くないな・・・ 夜は冷え込むからまだしも、現在暑くてかなわない。 ここのところ雨は降っていない。 しかも夏に向かっていっているのだ。 ついでに言っておくと、リアのメイド服も昨日と違いショートヴァージョンだった。 食卓に着くと、ヒューリィはジーっと味噌汁を見つめて指をくわえていた。 「どぉぞ、召し上がれ♪」 リアがそう促したのでいただきますと言って食べ始める。 「―――あっつ・・・・・・」 味噌汁を飲もうとすると、熱すぎて舌を火傷してしまった。 が、隣を見るとヒューリィは難なく飲み干していた。 ・・・・・・やっぱり龍なのか・・・? よく判らないが、そんな事を思ってしまった。 そうそう、熱かった味噌汁をリアがふぅふぅと冷ましてくれた。 なんか、照れくさかった。 3 昼になり、本当に逃げる事にした。 元々ぼくはそのつもりだったけど、リアは違ったんだ。 だから止めた。止めたさ。 自分の家に帰った方がいいって。そして、ぼくが龍に負けてしまったと言ってくれと。 その方が絶対に怪しまれないんだ。だから頼む。って言ってね。 もちろん、本心だよ。うん、本心。本心。危険な旅に巻き込みたくないわけじゃないからな。 だけど、彼女は一歩も退いてくれなかった。 「私は着いていきます。嘘は吐きません。それこそ、地獄までも。」 最初に言った言葉は冗談じゃなかったのか・・・くそう。 「それに、嘘は本当にできるんです、フラント様、本当の勇者になりましょう!」 昨日の夜は寝ぼけていたんじゃなかったのか・・・・・・ その、真実の瞳に見据えられ、ぼくは折れてしまった。 「・・・・・・勝手にしろっ!」 「えぇ、勝手にさせていただきます。」 そう言ってリアは笑った。 ぼくは不機嫌なまま畳んだテントを背負って歩き出す。 無言で歩いていると、急にフューリィが前に出る。 蝶を追っている・・・・・・両手で捕まえようとしたが、失敗。 もう一回挑戦するが、失敗。 「はぅ・・・・・・可愛いです。」 そう言って見とれているリア。 ・・・・・・今のうちに逃げる。 ぼくは、後ろも振り返らないで兎に角走った。 「・・・・・・ぜぇ・・・・・・はあ・・・・・・。」 丘の頂上付近で立ち止まる。 なんだかいつもより荷物が重い。気がする。 まるで、石でも運んでるみたいだ・・・。 あの迷惑メイドと無言龍娘のせいで疲れでも溜まってるのか? 「・・・・・・」 振り向く。―――と。 朱い髪の毛と青い髪の毛の少女達がいた。 当然ながら、迷惑メイドと無言龍娘だ。 が、まったく息が切れていない。 よーく見ると何故かトロッコのような物に乗っている。 さらにさらに見ると、ぼくの荷物の後ろにロープで繋がっていた。 なるほど。ね。 「・・・・・・楽ちん。」 「フラント様、ファイト一発ですわ。」 ・・・ぶちっ トロッコが丘を高速で下っていく。その名の通り、絶叫マシーンだ。 岩にぶつかってトロッコは粉砕された。・・・南無阿弥陀仏。 が。身軽にも、二人組みはトロッコを降りてその場に残った。―――チッ 「あらまぁ、フューリィさん、ここからは徒歩みたいですわ。」 「意地悪。」 「どっちがだっ!」 叫んだ。
| |
|
8月16日(火)00:48 | コメント(0) | 小説 | 管理
|